「ココは、もういないの」
ささやくような声で、ミカはぽつりとそう言った。
小さな手には、一匹の白猫の写真。名前は「ココ」。
6歳の誕生日を迎える前のある日、ココは静かに空へと旅立った。
それからというもの、ミカは笑わなくなった。
朝日がまぶしくても、夜空に星が瞬いていても、ミカの世界にはココのいない“空っぽ”な日々が続いた。
でも、ある日の夜。
眠れずに窓の外を見つめていたミカの目に、ふわりと光るものが映った。
それは、しっぽのような形をした雲。
月明かりに照らされて、まるでココが空からこちらを見ているようだった。
「ココ…?」
そうつぶやいたとき、不思議なことが起こった。
どこからともなく、かすかな“グルル…”という喉を鳴らす音が聞こえたのだ。
それは、ココが安心してミカにくっついていたときに出す音だった。

「ここに…いるの?」
その夜、ミカは久しぶりに少しだけ笑った。
そして翌日。
ミカは、一冊の本をみつけた。
そこには、自分と同じようにペットを失った人たちの話が綴られていた。
「私だけじゃないんだ」――その気持ちが、少しだけミカの心をほどいてくれた。
数日後、ミカはココの写真の隣に、小さなメッセージカードを置いた。
「ココ、空から見てる?
わたし、また笑えるようになってきたよ。
ありがとう、またね。」
その夜もまた、空にはあの“しっぽ雲”が、優しく揺れていた。


