私の家に、パグの「ぽんず」がやってきたのは、結婚してしばらく経った頃。
子どもがなかなか授からず、心がぽっかり空いたような毎日を送っていた私に、夫が「この子を家族に迎えよう」と連れてきてくれたのが、くしゃっとした顔とくるんとしたしっぽが愛らしい、ぽんずでした。

ぽんずはとにかく甘えん坊で、いつでも私のあとをトコトコついてきて、
お腹を見せては「撫でて、撫でて」と無言で訴えるような子でした。
朝起きると、ぽんずのいびきが聞こえる。
仕事から帰ると、尻尾をちぎれそうなくらい振って迎えてくれる。
当たり前だったその時間が、いつしか私の心を深く満たしていきました。
ぽんずと暮らして10年が過ぎた頃から、息が荒くなることが増え、動きもゆっくりになっていきました。
それでも、お気に入りのぬいぐるみをくわえて、いつもどおり「遊ぼうよ」と見上げてくる姿に、私は大丈夫だと思い込んでいました。
最期の日も、ぽんずは私の手の中にいました。
少しだけ身体を震わせて、静かに目を閉じて──私に顔をくっつけるようにして、旅立っていきました。
その瞬間、胸が押しつぶされるように痛くて、声も出ませんでした。
もう一度だけ抱きしめたかった。
もう一度だけ名前を呼んで、返事をしてほしかった。
数日間、私は何も手につきませんでした。
ぽんずのごはんの時間になると、つい器を出しそうになる。
ソファに座ると、いつも膝に来ていたぽんずの重みを探してしまう。
でも、ある日の夜。
夢にぽんずが出てきたんです。
お気に入りのぬいぐるみをくわえて、私のところにトコトコ走ってきて、いつものようにお腹を見せて「撫でて」と言ってきた。
私は夢の中で何度も撫でて、撫でて、泣きながら「ありがとう」って言いました。
朝目覚めたとき、布団の中がほんのりあたたかかった気がしました。
ああ、ぽんずは今もそばにいるんだなって、そう思えたんです。
今では、空を見上げるたびに「元気にしてる?」と語りかけています。
そして、ぽんずがくれたたくさんの笑顔や癒しが、今も私の中に残り続けていることに気づきます。
ぽんず、あなたは私の家族で、私の心そのものでした。
またいつか会えるその日まで、ずっと忘れないよ。
本当に、本当にありがとう。


