「しらたま」との時間は、私の人生そのものでした。
24年前、小さな段ボール箱の中で震えていた真っ白な子猫。それが、私のしらたまでした。
しらたまは、どんなときも私のそばにいてくれました。
うれしいときも、つらいときも。
言葉がなくても、しらたまの存在が、心の支えでした。

年月が流れ、しらたまは年を重ね、眠る時間も増えました。
そしてある春の日、静かに、私の腕の中で旅立っていきました。
「ありがとう」も「さようなら」も、涙の中でうまく言えなかった。
あの子がいない毎日は、まるで世界の色が抜けてしまったようで、心にぽっかりと穴が空いたままでした。
けれど——
ある日ふと、ベランダに差し込む陽だまりの中、しらたまがいつも座っていた場所を見つめていたとき、不思議と心が温かくなりました。
「ちゃんと、ごはん食べた?」
「無理しすぎてない?」
そんな声が、どこか遠くから聞こえた気がしました。
それからというもの、何度も思うのです。
雲の向こうで、小さなしらたまが、丸くなって空から私を見てくれているのだと。
私が笑えば、しらたまも尻尾をふる。
私が泣けば、そっと頬をなめに降りてくる。
そう思えるようになったのは、しらたまと過ごした24年が、心の中でずっと生きているからです。
しらたまは、空の上でも変わらず私の大切な家族。
これからも、見守ってくれている——
そう信じて、私は今日も空を見上げます。
「しらたま、元気にしてる? 私も頑張ってるよ」
空に向かって、笑顔でそう話しかけながら。


