私たちにとってペットは、大切な家族の一員です。毎日の暮らしに寄り添い、笑顔や癒しをもたらしてくれる存在です。その大切な存在との別れは、深い悲しみと喪失感をもたらします。この心の反応が「ペットロス」です。
ペットロスは、愛するペットを亡くした後に感じる悲嘆反応を指し、心理学的には「グリーフ（悲嘆）」の一種とされています。強い悲しみや寂しさに加え、「もっとしてあげられたのではないか」という後悔や罪悪感、不眠や食欲不振といった身体的な不調を伴うこともあります。
この心の変化は決して異常なものではなく、ごく自然な反応です。 人間の家族を亡くしたときと同じように、ペットを失ったときも深い悲嘆を抱くのは当然のこと。むしろ、それだけ深い愛情を注いできた証でもあるのです。
ペットロスの過程は、人によって大きく異なります。数週間で落ち着く人もいれば、何年も悲しみが続く人もいます。心理学者エリザベス・キューブラー＝ロスが提唱した「悲嘆の５段階」になぞらえると、次のような感情の揺れが見られることがあります。
否認：「まさか本当に亡くなったなんて」
怒り：「なぜ自分の子がこんな目に」
取引・罪悪感：「あの時もっとケアしていれば助かったかもしれない」
抑うつ：「もう何をしても楽しくない」
受容：「一緒に過ごせた時間が宝物だった」
ただし、この順番通りに進むわけではなく、行きつ戻りつしながら少しずつ心が癒されていきます。
ペットロスの辛さを深めてしまうのが「周囲の理解の少なさ」です。 人間の家族を亡くしたときの悲しみは共感されやすい一方で、ペットの場合は「動物なんだから仕方ない」と軽んじられることもあります。しかし、ペットと飼い主の絆は非常に強く、その喪失感は人間の家族の死に匹敵すると研究でも示されています。
では、どうすればこの悲しみと向き合えるのでしょうか。 大切なのは「悲しんでいい」と自分に許可を与えることです。 涙を流すことも、思い出を語ることも、心の自然な回復プロセスです。 また、同じ経験をした人と気持ちを共有することも有効です。
そして、少しずつ前に向けるようになったとき、「あの子が教えてくれたこと」を思い返してみてください。 無条件の愛、日常のささやかな幸せ、命の尊さ。 ペットの存在は、私たちに多くの贈り物を残してくれています。
ペットロスは、誰もが通る可能性のある道です。その悲しみは愛の証であり、やがて「ありがとう」という想いに変わっていきます。別れは終わりではなく、新しいつながりの形。大切な存在は、これからもあなたの心の中で生き続けていきます。
